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The beginning of new challenge

黙っている人

家具メーカーの製品改善会議の話。

A社が新しく「イタリア風のスタイリッシュなイス」を販売し、従来のものより2倍売れました。

しかし、「足が折れて壊れやす」というクレームが入り、すぐに対策会議が開かれたのです。


会議では、「お客様の声を重視するポリシー」に従い、「頑丈な足に変更する」ことになりました。

足は木製から金属に変更するか、木製のまま太くするかで意見が分かれました。

デザイン性を重視し、全体の素材の統一感を変えずに、木製の太い足に変更することになりました。

イスは改善され、壊れるというクレームは来なくなりました。
現場の混乱は収まり、社員は気持ちよく、お客様に販売できるようになりました。
社長はじめ上層部も「会社の信頼を損なわずに済んだ」と満足でした。 

*  *  *  *  *  *  

こういった製品の改善はよく行われています。

しかし、こうやって導き出された会議の結論は、ベストなのでしょうか?

誰もそうは思っていないでしょう。

ベストとは言えないが、方法としてはこれしかないという感じでしょうか。

では、なぜベストと言えないのでしょう?

その理由は大きく分けて2つあります。

  1. クレームを言わないお客様の考えが考慮されていない。
  2. 会議で、黙っている人の意見が反映されていない。

まず、1について説明します。

「消費者は必ずしも、ためになる意見を言わないものである」

「批判的な意見やクレームは言いやす」

基本的に、クレーム以外の意見は入ってこない、もしくは、特段取り上げられないことが多いのです。

会議で、クレームだけを問題視すると、商品の良い点を、批判的な意見で、いとも簡単につぶしてしまうのです。

なので、挙がってこないお客様の声を、いかに積極的に取り込むかが重要になってきます。

次に2についてですが、

「会議で黙っている人が悪い」

そういう考えが一般的だと思います。

しかし多くの会議では、

黙っている人は必ずいます。

意見を持っていない人もいます。

会議に出席しない人がいます。

彼らはどういう人たちなのでしょう?

「現状に満足している」
「発言しても意味がないと、あきらめている」

こういう人たちの意見は、異論がないとみなされ、無視されます

そして、発言の多い人・声の大きい人・立場が上の人などの意見が通ります

先程の1の「クレームを言わないお客様」のように、彼らも実際は何らかの考えを持っています。

多くの人の意見を取り入れるために、会議を開きますが、彼らの意見も取り出し、共有することは意義のあることだと思います。

そういった、「挙がってこないお客様の声」「黙っている人の意見」

を取り込むために、会議を開く前に、すべきことはたくさんあります。

準備次第で、会議から導き出される結果は大きく違ってきます。

黙っている人の考えをいかに取り込み、あるいは引き出すかは、会議を開く側の技量によります。

つまり、上層部の人間や、議長となって意見を取りまとめる人の能力によります。

会議が活きたものになるかどうかは、幹部次第という事になります

最初の話の結末ですが、

この後、会社の安堵とは逆に、売り上げは急に下がっていったのです。

お気づきでしょうか?

クレームをなくして満足しているのは、お客様ではなく社員なのです。

「軽くてスタイリッシュなイスに満足している人が、圧倒的に多いことを、軽視してはいけません」

つまり、「クレームを言わない黙っているお客様を軽視してはいけない」ということです。

*  *  *  *  *

「多数決で決まったということは、これがより多くの人の意見なのだ」

「お客さんがそうおしゃっているのなら、それが正しい。お前の意見は関係ない!」

「責任者は私だ。お前に責任が取れるのか⁈ 責任が取れないなら、言われたとおりにしろ」

こういう考え方は、決断の方向を誤ってしまう可能性が高いと言えます。

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