家具メーカーの製品改善会議の話。
A社が新しく「イタリア風のスタイリッシュなイス」を販売し、従来のものより2倍売れました。
しかし、「足が折れて壊れやす」というクレームが入り、すぐに対策会議が開かれたのです。
会議では、「お客様の声を重視するポリシー」に従い、「頑丈な足に変更する」ことになりました。
足は木製から金属に変更するか、木製のまま太くするかで意見が分かれました。
デザイン性を重視し、全体の素材の統一感を変えずに、木製の太い足に変更することになりました。
イスは改善され、壊れるというクレームは来なくなりました。
現場の混乱は収まり、社員は気持ちよく、お客様に販売できるようになりました。
社長はじめ上層部も「会社の信頼を損なわずに済んだ」と満足でした。
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こういった製品の改善はよく行われています。
しかし、こうやって導き出された会議の結論は、ベストなのでしょうか?
誰もそうは思っていないでしょう。
ベストとは言えないが、方法としてはこれしかないという感じでしょうか。
では、なぜベストと言えないのでしょう?
その理由は大きく分けて2つあります。
- クレームを言わないお客様の考えが考慮されていない。
- 会議で、黙っている人の意見が反映されていない。
まず、1について説明します。
「消費者は必ずしも、ためになる意見を言わないものである」
「批判的な意見やクレームは言いやす」
基本的に、クレーム以外の意見は入ってこない、もしくは、特段取り上げられないことが多いのです。
会議で、クレームだけを問題視すると、商品の良い点を、批判的な意見で、いとも簡単につぶしてしまうのです。
なので、挙がってこないお客様の声を、いかに積極的に取り込むかが重要になってきます。
次に2についてですが、
「会議で黙っている人が悪い」
そういう考えが一般的だと思います。
しかし多くの会議では、
黙っている人は必ずいます。
意見を持っていない人もいます。
会議に出席しない人がいます。
彼らはどういう人たちなのでしょう?
「現状に満足している」
「発言しても意味がないと、あきらめている」
こういう人たちの意見は、異論がないとみなされ、無視されます。
そして、発言の多い人・声の大きい人・立場が上の人などの意見が通ります。
先程の1の「クレームを言わないお客様」のように、彼らも実際は何らかの考えを持っています。
多くの人の意見を取り入れるために、会議を開きますが、彼らの意見も取り出し、共有することは意義のあることだと思います。
そういった、「挙がってこないお客様の声」「黙っている人の意見」
を取り込むために、会議を開く前に、すべきことはたくさんあります。
準備次第で、会議から導き出される結果は大きく違ってきます。
黙っている人の考えをいかに取り込み、あるいは引き出すかは、会議を開く側の技量によります。
つまり、上層部の人間や、議長となって意見を取りまとめる人の能力によります。
会議が活きたものになるかどうかは、幹部次第という事になります。
最初の話の結末ですが、
この後、会社の安堵とは逆に、売り上げは急に下がっていったのです。
お気づきでしょうか?
クレームをなくして満足しているのは、お客様ではなく社員なのです。
「軽くてスタイリッシュなイスに満足している人が、圧倒的に多いことを、軽視してはいけません」
つまり、「クレームを言わない黙っているお客様を軽視してはいけない」ということです。
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「多数決で決まったということは、これがより多くの人の意見なのだ」
「お客さんがそうおしゃっているのなら、それが正しい。お前の意見は関係ない!」
「責任者は私だ。お前に責任が取れるのか⁈ 責任が取れないなら、言われたとおりにしろ」
こういう考え方は、決断の方向を誤ってしまう可能性が高いと言えます。